3.はじまりの町へ #梅太郎伝説
…
あれから何日飛んでいるだろうか。
ずっと海の上を飛んでいる。
ただ、意外と寝れることに自分でもびっくりした。
両頬は未だにズキズキ痛む。
食べ物や水分は、吹っ飛ばされる前にギリギリ梅を
何個かオムツに入れていたのが功を奏した。
しかし、なぜオムツをしているかは、
そこはファンタジーだとして忘れることにした。
飛びながら、ふと考えた。
あの場所にいった理由を。
あの場所に行かなければ、
おじいさんとおばあさんは仲睦まじく暮らせたはずだ。
梅太郎は、どうしよもなかったことであるが
後悔と責任を感じてしまっていた。
きっと、あの後もずっと戦いが続いているのであろう。
いま、自分に出来ることは何か。
ほとんどない経験の中でぐるぐる頭の中に巡らせた。
そして、ひとつの結論に至った。
それは、おじいさんとおばあさんの喧嘩を止める。
これは、最初に思ったことであるが、やはり、
これは使命、いや、天命であると自分に言い聞かせた。
自分で蒔いた種は、自分で刈り取る必要がある。
梅太郎は、強い思いで、この理不尽な運命に立ち向かうことにした。
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さらに数日、飛んで梅もなくなってしまった。
このままでは、ゲームオーバになってしまう。
喧嘩を止めに行く以前の問題だ。
死が近づいてきていると思った梅太郎は、恐怖を感じていた。
それ以上に、ずっと海の上を平行して飛んでいることに
物理の法則を無視しすぎていないかとツッコミを入れる
余裕はあった。
すると、少し降下を始めた。と思った瞬間、突然落下に変わった。
野球のフォークボールがありえない角度で落ちている感じだった。
下を見るといつの間にか海を超えて、街に差し掛かっていた。
一直線に民家に落下していった。
ファンタジー世界では、落ちる寸前に魔法などで
ふわっとギリギリで宙に浮くとかよくある話。
梅太郎は、大丈夫だだろうと、口笛を吹きながら
余裕をかましていた。
バン、バキ、グシャ、ドン、ヒャッハッハー
そんなの関係なく、家の屋根から突っ込み、
家を壊しながら貫通して地面に叩きつけられた。
最後の笑いみたいな効果音に腹が立った。
一つ言えること、
重症ではあるが、なんとか生きている、これならこれでファンタジーだな
と。
一命をとりとめた梅太郎は、
その家で大切に育てられ、成人を迎えた。